うなぎが好きな人は知っている。埼玉県浦和はうなぎのうまい店がひしめく大激戦地である。浅草生まれ浅草育ちのお嬢様から「うなぎ食べにいきませんか?」とメールがきて行くことになった。
埼玉の浦和はうなぎが美味い
浅草のうなぎの名店は、たくさんあるけど「色川 」かな。それとも南千住の「尾花」かな?と考えると仕事はどうでも良くなるのである。
気合いで仕事をかたして会社を出発する。
銀座駅ではなく有楽町に向かう銀座のOLたち。
「どこのうなぎ?神田?」
「浦和ですよ」
「え?浦和まで行くの?」
一緒に向かうOLたちは、東京都内に在住している2名と横浜在住が2名。
帰りは遠いなと思いながらも
「うまいものは足を使うのです」とOLたちは逞しい。
東京駅で乗り換えて上野東京ライン宇都宮線に乗って
浦和に向かう。
ところが、銀座からなんと42分で浦和についた。
「浦和って近いいんだ」と横浜市民は初めて降りる浦和駅前の寂しさに驚いていた。
「県庁所在地でこの寂しさなんだね」
と浦和駅から歩くこと5分で鰻屋に着いた。
中村屋 鰻 浦和
店構えからしていい感じだ。
しかも、予約しないと入れない。
着席してから常連のOLは「うざくとお新香と骨煎餅に冷酒2合ください」と注文したと思ったら
「うなぎの特上が2つ、上が2つです」とうなぎを先に注文する。
もう少しゆっくりうなぎ注文しない?と思っていたが、中村屋さんは注文受けてからサクから1時間かかるのだよ。
うなぎが焼きあがるまでに。
うなぎの骨が美味い。
うなぎが出てくるまでに、お酒なのね。
ビールはダメなの?
「は?鰻屋でビール飲むの?アホじゃない。酒だよ酒」と24歳の下町娘は叫ぶのである。
この娘は正真正銘の江戸っ子だ。
酒飲むとき、肘は水平に上がっている。盃を持つ手の肘が下がっている新入社員のことを「なってない」と怒る。
「いかか。盃は必ず肘上げてうけろ。両手だよ」と24歳の可愛いOLは急に「姉御」に変身するのである。
「え?鰻屋さんは新入社員教育で連れてきたの?」
「当然です。正しい日本人として盃の受け方から教えないと」
なるほどね。
ということは、これって私が払うのですよね。
「当然です。研修費です」
仕事が早いOLは違いますね。
うなぎときゅうりの酢の物で「うざく」だね。
これ旨すぎだろ。
酒が進むよ。
さらに酒が進むものが登場した。
漬物だ。自家製の糠漬け。
これはマジで美味いぞ。
一気になくなり、4つも食べる。
きゅうりを食べたら酒で流す。
大根は食感が素晴らしい。
これにビールはないわな。
「骨煎餅を食べてビール飲んだら、口いっぱいに生臭さが残るんだよ」
確かに下町っこのいう通りだ。
どうしてこのお店を知ったのですか?
新入社員の素朴な疑問だよな。
「あのね。子供の頃からうなぎ大好きで、じいちゃんによく神田の菊川に連れていかれたの。ある時、他に美味しい鰻屋さんあるよねと聞いたら、『浦和にたくさんあるぞ
』とじいちゃんが教えてくれた。社会人になって浦和のうなぎを食べにきたのよ。まだたくさんあるのだよ。」
「何件あるのですか?」
「このポスターの数だな」
どんどん数が減っている。
後継者がいないんだって。
「あたしが好きなのは、中村屋、むさし乃、小島屋の3店だな」
「全部いかれたのですか?」
「もちろん、食べたよ。ボーナス出たらうなぎを食べる旅だよ」
「味ってそんなに違うのですか」
「全く違う」
とうなぎと酒の飲み方講習がいい感じで盛り上がってきたら
出てきたよ。
特上です。ご飯の中にも、うなぎが引かれてます。
ふわふわにして、スッキリドライな味付け。
これは間違いなく、日本酒に合ううなぎである。
うなぎの上だとと隙間がある。
うなぎのサイズが小さいのだよ。
「特上食べたかったら早く仕事を覚えるんだよ」と24歳のOLは檄を飛ばす。
新入社員はうなぎのうまさにメロメロで文句ひとつ言わずに、笑いながら食べている。
「何笑ってんだよ」
「あの、美味しいもの食べると笑いが出てきませんか?」
「このうなぎは、うますぎます。お給料が出たら食べにこようと思います」
「それが大事なんだよ。お客さまと食事をするときに、お客さまが感激して食べてもらわないとな」
この24歳のOLは只者ではない。
一気に食べて、お酒を追加で飲んで100分一本勝負完了。
帰りも楽なんだよ。
上野東京ラインはラッシュと逆方向だから座って帰れる。
浦和から上野まで20分。横浜まで53分。
新入社員が「浦和に引っ越そうかな」というと下町OLから一言。
「引越すならうちにこいや」
「先輩のうちに下宿ですか」
「うちのマンションに空室があるからさ。格安にしてやるぞ」
浅草の財閥のお嬢は遊びもビジネスも一流なのである。
後日、接待で中村屋に再訪したらお客さまは
「ここ最高じゃないか」と大喜び。
これが営業の基本だよな。
中村屋 鰻 浦和へのアクセス
JR浦和駅より、徒歩約9分
浦和駅から459m
048-822-4993
営業時間
[月~金]
11:00~14:30 17:00~21:00(L.O.19:50)
[土]
11:30~14:00 17:30~20:00(L.O.19:30)
定休日 日曜
現金のみです
https://www.urawa-unagi-nakamuraya.com
うなぎが出来上がるまで1時間かかります。
なので、予約の段階で「何時からうなぎを食べたい」と言っておくと焼いておいてくれます。